ロネッツが歌って1963年に大ヒットしたBe My Baby(ビー・マイ・ベイビー)は、イントロのドラム・フレーズが印象的。ドン・ド・ドン・タン/ドン・ド・ド・タ・タ・タのリズムが、ポピュラー音楽史上初めてレコーディングされた記念碑的な楽曲です。


"Be My Baby" by The Ronettes〜日本語訳付き(Youtube)


対訳歌詞

このフレーズは、セッション・ドラマーのハル・ブレインによるもの。ちなみにプロデューサーは、かのフィル・スペクターで(作曲者の一人でもある)、テイクを42回もやり直すという偏執的?なレコーディング作業の中から生まれてきたとのことです。

今回は、Be My Babyの象徴とも言うべきこのドラムフレーズ(リズムパターン)が、後世の楽曲でどのように使われたかを探ってみようという企画。よく聴くフレーズなんだけど、どんな曲があったっけ・・・?に対して、70年代と80年代の計3曲を取り上げました。


ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ザ・ロネッツ

1.70年代の継承曲 〜 カーペンターズとビリー・ジョエル


まずはカーペンターズが1975年に発表したOnly Yesterday(オンリー・イエスタデイ)。控えめなリズムですが、しっかりと"Be My Baby"してますよね。そして、ここぞと言う時の手数の多いドラミングは、まさにハル・ブレインを彷彿させます。(このドラム演奏はジム・ゴードン)


実は、このドラムフレーズは単にパクッったという次元のものではなく、聴き手にBe My Babyを想起させる目的で使われています。Only Yesterdayの歌詞を見れば、二つの楽曲のストーリーが関連していることが読み取れます。

Only Yesterday 対訳歌詞


青春の輝き〜ヴェリー・ベスト・オブ・カーペンターズ

次は、ビリー・ジョエルが1976年に発表したSay Goodbye To Hollywood(さよならハリウッド)。前年にOnly Yesterdayを聞いたビリーが、それなら俺も・・・と思って作ったかどうかは知りません。控えめなカーペンターズに対して、「ワテは派手に行きまっせ」といったところでしょうか・・・(笑)。


この歌詞は、ビリーが慣れ親しんだロサンゼルスの地に別れを告げて、故郷のニューヨークへ戻るという内容。やはり過去を回想するための音楽的モチーフ(リズム動機)として、Be My Babyのドラムフレーズが用いられています。そしてBabyともさよなら(Goodbye)という訳ですね。


ビリー・ザ・ベスト

以上が、ドラムフレーズを継承した70年代の代表曲。このうちOnly Yesterdayは、歌詞の内容からして、Be My Babyのアンサー・ソングと言っても良いでしょう。出会いのストーリーがBe My Babyだとすれば、二人の幸せな状況がOnly Yesterdayとなります。

2.80年代の継承曲 〜 エイジア


では、この恋人同士に転機は訪れたのでしょうか?・・・。実は、これに続くストーリーが82年のヒット曲に存在しています。それがエイジアのHeat of the Moment(ヒート・オブ・ザ・モーメント)。そして、この曲でも、Be My Babyのドラムフレーズ(ドン・ド・ドン・タン)が使われているのです。


昔は上手くやっていたけれど、一時の激情(Heat of the Moment)が、二人の仲を引き裂いた・・・という歌詞。Be My BabyとOnly Yesterdayが女性目線で書かれていたのに対し、ここでは男性目線からの後悔の念が描かれています。

Heat of the Moment 対訳歌詞

このストーリーの関連性(継続性)について、作者のジョン・ウェットンは明言こそしていませんが、次のような発言をしています。歌詞にある「And now you find yourself in 82の"82"とは、年号ではなくロケーションを意味している」と。つまり"82"は、Be My Babyの"63"を起点としOnly Yesterdayの"75"を通過点とした、相対的な時間位置のことだと解釈できるのです。


エイジア・ゴールド

3.結びに代えて・・・


では、起・承・転と続いたBe My Babyのストーリーは完結したのでしょうか・・・?。残念ながら、僕はこれに相当する楽曲を知りません。あるいはBe My Babyに回帰するのも、結末としてはアリなのかも?。音楽も歌詞も、結局は振り出しに帰納されるということでしょうか・・・。

という訳で、Be My Babyのモダン・ロック・カバーを埋め込んでおきました。



最後に余談ですが、Be My Babyからこのドラム・フレーズを省いてしまったらどうなってしまうでしょうか?。もはや一心同体となったこのリズムを敢えて使わなかったカバーを、ジョディー・ミラーが発表しています。

Jody Miller - Be My Baby(Youtube)

なるほどインパクトには欠けますが、アコースティックな清清しさが増して、よりメロディーが引立っている感があります。ハワイアンなスライド・ギターもいい味出してますしね。結局この楽曲は、美しいメロディーラインによって支えられていることを実感させられます。


Jody Miller/Anthology