ドナ・サマーというと、ホット・スタッフ(Hot Staff)くらいしか知らなかった僕ですが、最近とても興味深い作品に出会いました。それは、恋はマジック(Could It Be Magic)という曲。ちょっと複雑なコード進行と、色香が炸裂した間奏にすっかり魅了されてしまいました・・・。


1976年のシングル曲で、アメリカの映画「ミスター・グッドバーを探して」のサウンド・トラックにも使われています。ちなみにこの映画では、美しい女教師が麻薬とセックスに溺れ、やがて身を滅ぼしていくストーリーが描かれているとのこと。この曲を聴いて、成るほど・・・と思いましたね。


1.イントロはショパンの前奏曲


先の動画では省略されていましたが、この曲には36小節ものイントロが存在していて、愛の前奏曲(Prelude To Love)というタイトルが付いています。なんでイントロだけに別のタイトルを付けたのかは不思議でしたが、通して聴くとこんな感じに・・・。↓

Donna Summer - Prelude To Love / Could It Be Magic (Youtube)

で、色々調べていくうちに、このイントロはショパン作曲「24の前奏曲 作品28 第20番 ハ短調」の転用であることが分かったんですね。だからPrelude To Loveなのか・・・とガッテンしたわけですが、歌のBメロ部分にも前奏曲からの転用があり、よく練られた面白い曲だな・・・と。


コード進行で特徴的なのが、最後の小節で登場する"ナポリの"。キーCmにおけるサブドミナントのD♭は、クラシック作品でしか聴けないような古典和声ですが、16ビートのディスコ・サウンドで使われているところがマジカルで刺激的。成るほど、だから、Could It Be Magicなのか!・・・と。

2.オリジナルはバリー・マニロウ作曲のスローバラード


いろいろ謎が解けてきたところで、この作曲者を調べてみると、バリー・マニロウであることが判明。コパカバーナや歌の贈りもの(I Write the Songs)で有名なシンガー・ソング・ライターですが、彼のデビュー・アルバムに収録され、1975年のシングル・ヒットであることも分かりました。

Could It Be Magic - Barry Manilow (Youtube)

マニロウのバージョンでは、イントロがショパンのまんまで使われており、エンディングでも再現するアーチ型(サンドイッチ型)の楽曲構造になっています。シンプルなピアノ伴奏から始まり、壮大な盛り上がりを見せた後に前奏曲に戻ってくるところはなかなか感動的。


Barry Manilow (1st Album)

3.ジョルジオ・モロダーによるディスコ・サウンドへの変貌


ところで、このスロー・バラードの極みとも言える曲を、ディスコ・サウンドに変身させた張本人は誰なのか?・・・。アメリカのブラック・ミュージックとは一線を画したようなサウンドも気になったので、これまた色々調べてみると、ジョルジオ・モロダーなる人物が浮かび上がってきました・・・。

モロダーは、70年代後半のヨーロッパ系ディスコ・ミュージック(いわゆるミュンヘン・サウンド)や、80年代のサントラ・ミュージックで多大な業績を残したイタリア人の音楽プロデューサー。ドナ・サマーを見出し、ディスコの女王に君臨させたことでも知られています。


Love Trilogy

恋はマジックが収録されたドナのセカンド・アルバムLove Trilogy(1976年発表)でも全面プロデュースをしていて、アレンジやサウンド・メイクも担当。この流れが分かってくると、この楽曲に仕掛けられた魔法の数々が解き明かされていく気がします。

結局、恋はマジックの関係者をたどっていくと、ドナ・サマー、ジョルジオ・モロダー、バリー・マニロウと下り、ショパンにまで行き着く。逆に言うと、ショパン作品の根底にある官能性が、ドナ・サマーで結実したと言うことでしょうか・・・。まさに、「吐息はショパンの調べ」・・・という訳ですね。


ホット・スタッフ 〜 ドナ・サマー・グレイテスト・ヒッツ

4.Take Thatによるカバー 〜 むすび


では最後に、恋はマジックの近年のカバーをご紹介。イギリスの男性グループTake That(テイク・ザット)が1992年に発表したもので、ドナ・サマーの16ビート系・横ノリ・サウンドに対して、8ビート系の縦ノリ・サウンドになっています。


このバージョンでは、本来裏拍にある音符が表拍に置き換えられ、よりダンサブルなアレンジに・・・。次は作者のバリー・マニロウと共演した2015年のライブ映像ですが、前半と後半を聴き比べるとこの違いがよく判ると思います。


それにしても、当時70歳というのにバリーはなんと若々しいことか・・・。不老長寿のサプリでも飲んでいるのか・・・?、実は、これが最大のマジックだったりして・・・(笑)。


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